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無人航空機を利用したUASネットワーク
研究の概要

小型の無人航空機
UAS(Unmanned Aircraft Systems)とは無人航空機によって構成されるシステムです。平成23年3月に発生した東日本大震災のような大規模な災害が発生したとき、基地局の損壊によって携帯電話やスマートフォンなどの通信ができなくなるエリアが発生してしまいます。また、一時的な通信回線を提供する衛星中継車や移動基地局などは地上の状況により運用が制限されてしまうことがあります。そこで、無人航空機を利用した通信システムに注目が集まっています。空を自由に飛行できる無人航空機に通信装置を搭載することで、地上の孤立したエリアの端末でも無人航空機を介して遠隔地との通信が可能となります。これにより、損壊した基地局の代わりとして空を経由した通信サービスを提供できるようになります。
当研究室では、複数台の無人航空機を利用した効果的なネットワーク構築方法について研究を行っています。
複数台の無人航空機を利用したネットワーク
複数台の無人航空機を利用したネットワークでは、1台の無人航空機に比べてより広範囲にネットワークを構築がすることが可能になります。当研究室では無人航空機の展開方法や軌道制御などが通信性能へ与える影響について研究しています。この研究により、空に安定したネットワークを作ることを目指しています。

UASネットワーク
フィールド実験
平成26年2月には直接通信が不可能な距離にある地上の2地点間を、小型無人航空機を複数台利用して空中に構築した通信ネットワークでつなぐことにより、双方向でメールを送受信することに成功しました。今回の実証実験ではスマートフォンと無人航空機による応急通信ネットワーク構築の実現を目的とし、その実現に必要な以下の3つの項目の実証に成功しました。
市販のスマートフォンに標準搭載されているWiFi機能を利用し、地上のスマートフォンと上空のマルチコプターの間で直接連携すること
(100メートル以上の距離でもメール送受信に成功)
直接通信することができない距離にあるマルチコプター同士を、その飛行経路等を適切に制御することにより、マルチコプター同士の直接通信を一時的に可能にすること
(2台のマルチコプター間で、WiFiによるメールの送受信に成功)
マルチコプターの移動そのものを情報の運搬に利用することで、情報の伝搬可能エリアを拡大すること
(実験環境下で実施可能な最大距離である約700メートルの運搬に成功)
平成26年2月の実験概要
2014年7月30日と31日に東北大学青葉山キャンパス上空に固定翼の小型無人航空機(Puma-AE)を飛行させ、無人航空機に搭載した端末と地上の端末で通信実験を行いました。
本実験は、小型無人航空機の移動が地上端末と小型無人航空機間の通信に与える影響の測定を目的とした通信実験です。地上端末から対地上高度100mで旋回飛行する無人航空機にメッセージを送信し、地上端末と無人航空機との間でメッセージの到達が可能な距離を測定しました。この実験では下図のような実験の結果が得られ、上空を移動する無人航空機と地上端末間の距離が通信に与える影響が確認されました。
なお、本実験では受信観測装置として”スマホdeリレー®”の技術が搭載された端末を使用しました。

無人航空機との通信実験の様子

実験結果概要

実験の様子を撮影した動画(YouTubeの動画へリンク)
第1回国際ドローン展

ドローンdeリレー
2015年5月20日から22日に幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催された「第1回国際ドローン展」において、当研究室と共同で技術開発を行っている構造計画研究所が展示発表を行い、その様子がインターネットウォッチニュースに掲載されました。
「ドローンdeリレー」とは、当研究室が開発した「スマホdeリレー
®」をドローンに搭載したものです。
また、「スマホdeリレー
®」とは、スマートフォン端末だけで安定したマルチホップ通信を実現する、インフラレスの通信技術です。
当研究室は、構造計画研究所と共同で「スマホdeリレー
®」ならびに「ドローンdeリレー」の技術開発と事業化検討に取り組んでいます。
インターネットウォッチニュース(外部リンク)
スマートコミュニティ+IoT World 東北 2015
2015年11月12日から13日に仙台国際センター(宮城県仙台市)で開催された「スマートコミュニティ+IoT World 東北 2015」において、当研究室と、共同研究開発を行っている構造計画研究所がUASに関する展示発表を行いました。
「スマートコミュニティ+IoT World 東北 2015」とは、クリーンエネルギー、防災・減災、ドローン、IoT(Internet of Things)などをテーマにした講演、セミナー、展示が行われる法人向けのイベントです。当研究室では、無人航空機分野において当研究室が取り組んでいる研究の紹介ポスターと、当研究室と構造計画研究所が共同で開発を行った無人航空機搭載用無線通信機、実験用ドローンのコンセプトモデルを展示しました。
スマートコミュニティ+IoT World 東北 2015(外部リンク)
上空における小型無人航空機間通信の測定実験
2015年12月24日に福島県福島市にあるふくしまスカイパークにて、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)と共同で小型無人航空機を利用した無線通信の測定実験を実施しました。
本実験では、NICTが所有する固定翼の小型無人航空機(Puma-AE)と当研究室が所有する回転翼の小型無人航空機の2機を使用しました。各無人航空機には小型無線通信端末を搭載し、地上の離れた2点間の端末間通信の中継を行いました。
そして、中継における無人航空機間の通信が全体の通信に与える影響について測定を行いました。
平成27年12月の実験概要

実験の様子を撮影した動画(YouTubeの動画へリンク)
報道記録
- 平成25年12月14日掲載、螢雪時代,2014年1月号,旺文社、「孤立地域からの情報発信を容易にする通信技術を実証」
- 平成25年9月12日掲載、茨城新聞(朝刊8面)、「圏外でもメール可能 東北大で開発進む スマホ間を転送」
- 平成25年9月6日掲載、山陽新聞(朝刊9面)、「通信圏外でもメール可能に 災害時備え東北大研究 スマホ機能活用 端末リレーで転送」
- 平成25年9月6日掲載、宮崎日日新聞(朝刊8面)、「東北大 「圏外」でもメール可能 災害備え研究、海外注目」
- 平成25年9月6日掲載、中国新聞(夕刊4面)、「「圏外」でもメール可能 東北大開発進める 災害に備え海外も注目」
- 平成25年9月5日掲載、東京新聞(夕刊8面)、「東北大 「圏外」でメール送受信防災用研究に途上国注目」
- 平成25年9月4日掲載、電波タイムズ(1面)、「数珠つなぎの通信ネットワーク 東北大、NICT スマホ・衛星・無人機でつくる接続に成功」
- 平成25年8月29日掲載、日経産業新聞(11面)、「無人飛行機と複数スマホ通信東北大など実験成功」
- 平成26年3月7日掲載、大規模災害発生直後からの迅速かつ広範な情報収集が可能 無人航空機による応急通信網構築の実現性を実証
- 平成25年8月29日掲載、災害による孤立地域からの情報発信を容易にする通信技術を実証(「スマホdeリレー®」と小型無人飛行機中継システムの接続実験に成功)
- 平成25年7月30日掲載、スマホ・衛星・無人飛行機でつくる世界初の通信ネットワーク
関連情報
論文
- Ahmed E.A.A. Abdulla, Hiroki Nishiyama, Nei Kato, Fumie Ono, Ryu Miura, "Towards Fair Maximization of Energy Efficiency in Multiple UAS-aided Networks: A Game-Theoretic Methodology," IEEE TWC 2014.
- Ahmed E.A.A. Abdulla, Zubair Fadlullah, Hiroki Nishiyama, Nei Kato, Fumie Ono, Ryu Miura, "An Optimal Data Collection Technique for Impproved Utility in UAS-aided Networks" IEEE INFOCOM 2014, Apr. 2014.
- Daisuke Takaishi, Hiroki Nishiyama, Nei Kato, Fumie Ono, Ryu Miura, "Network Construction with Unmanned Aerial Vehicules for Disaster Areas" IEEE Communications Society SSC Newsletter, vol. 24, no. 1, pp. 9-12, 2014.