爆発的に普及したスマートフォンですが、搭載されているWiFiを活用すれば、携帯電話がつながらなくても、隣の人はもちろん、周囲のスマートフォンにデータをリレーしてもらうことで遠くの人とも情報を交換することが可能になります。
災害等の緊急時の情報通信、商店街等での広告・クーポン配布、イベント会場等での少人数グループ内情報交換、団体旅行・登山等でのトランシーバ的な利用、発展途上国等での通信サービスなどへの応用が期待できます。
「スマホdeリレー®」は各種メディアに広く取り上げられ、報道されました。
下記の外部リンクでは、第1世代のスマホdeリレーの仕組みなどがご覧頂けます。なお、商用化された第2世代は、第1世代とは異なる技術を一部採用しています。
"スマホdeリレー®" 紹介映像(外部リンク)
東北大学 研究シーズ集「圏外でも通信可能な"スマホdeリレー®"」(外部リンク)
また、株式会社 構造計画研究所によるスマホdeリレー®の概要は下記の外部リンクからご覧いただけます。
構造計画研究所のスマホdeリレー®テクノロジー(外部リンク)
加藤・西山研究室ではソフトウェア「スマホdeリレー」を搭載したスマートフォン27台によって実際に実験を行い、仙台市の市街地内を通る2.5kmの経路の経路でメッセージ転送に成功しました。
この「スマホdeリレー」は本研究室が考案したアルゴリズムを実装しており、通信事業者(携帯電話)の回線を利用することなく、スマートフォンのWiFiだけを利用してメッセージを離れた所までリレーすることができます。 これにより、携帯電話がつながらないエリアからでも周囲のスマートフォンを介してメッセージを送信できる可能性が示され、被災地における通信手段の提供に大きく前進しました。
(1) 実験前の打ち合わせ | (2) 実験風景 | (3) スマートフォン画面 |
モバイル通信端末のみで自由自在にネットワークを構築することを可能にする「スマホdeリレー®」のコンセプトは、国連下部組織の国際電気通信連合電気通信標準化部門(ITU-T)のフォーカスグループに寄与文書として入力しており、次世代のネットワークシステムの一つとして一定の支持を得ています。
さらに、機動力に優れた小型無人飛行機中継システムとの接続実験の成果は、アジア・太平洋電気通信共同体の無線グループ(AWG)に寄与文書として入力しており、小型無人飛行機を通信インフラとして利用する先端的な取り組みとして世界から非常に熱い注目を集めています。
2015年10月23日に実施された東北大学総合防災訓練において、耐災害性に優れた情報通信技術の一つとしてスマホdeリレー®の実証実験を行い、キャンパスの被災状況や学生からの声を効率的に収集・伝達することに成功しました。
本実験では、東北大学及び、国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)、日本電信電話株式会社(NTT)が川内キャンパスから片平キャンパスまでのキャンパス間ネットワークを構築しました。
その中で、スマホdeリレー®は学生が多数在籍する川内キャンパス内の効率的なリレー通信により情報を収集し、収集した情報を災害対策本部が設置された片平キャンパスまでメール送信しました。
本実験では1時間以内にテキストメール675通と画像付きメール44通の送信に成功しました。
「スマホdeリレー®」の研究が「独創性を拓く 先端技術大賞 特別賞」を受賞しました。この賞は、優れた研究成果を挙げた理工系学生や企業・研究機関などの若手研究者に対して与えられる賞です。授賞式は高円宮妃久子さまをお迎えし、東京・元赤坂の明治記念館で行われました。
【受賞題目】
「自律分散ネットワークの安定化制御技術の研究開発~スマホdeリレー®が切り拓くネットワーク新時代~」
第2世代のスマホdeリレー®は約5年に渡る研究開発を経て、2016年春に商用化が完了ました。今後は、スマホdeリレー®の特徴を活用した様々なアプリケーションの開発などが産業分野で広く進められていくことが期待されます。
一方、第2世代のスマホdeリレー®に搭載されているリレー制御機能は、ドローン・自動車・ロボットなどの多様なD2D (Device to Device) 通信への適用を考えた場合、一部で力不足な面も明らかになっており、その課題を解決する第3世代の研究開発に期待が寄せられています。
(1) ドローン | (2) 無人航空機 (固定翼) |
(3) ICTカー | (4) 自動車 | (5) 海外運用 |
スマホdeリレー®の発展例 |
「スマホdeリレー®」はスマホのみでネットワークを自由自在に形成することができますが、無人飛行機との接続によってリレーの範囲を大幅に拡大できるため、特に災害時などに被災地域内のみならず遠隔地をも含めた情報共有を可能にします。 平成25年7月には独立行政法人情報通信研究機構(NICT)が所有する「耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク実験設備」の一部である「小型無人飛行機中継システム」の接続実験を行い、メールをスマートフォンのリレーと無人飛行機の中継によって約3kmの距離を数秒で転送することが確認されました。 さらに、1MB程度のファイル転送も可能なことが確認されました。
平成26年2月には直接通信が不可能な距離にある地上の2地点間を、小型無人航空機を複数台利用して空中に構築した通信ネットワークでつなぐことにより、双方向でメールを送受信することに成功しました。今回の実証実験ではスマートフォンと無人航空機による応急通信ネットワーク構築の実現を目的とし、その実現に必要な以下の3つの項目の実証に成功しました。
2014年7月30日と31日には東北大学青葉山キャンパス上空に固定翼の小型無人航空機(Puma-AE)を飛行させ、無人航空機に搭載した端末と地上の端末で通信実験を行いました。
本実験は、小型無人航空機の移動が地上端末と小型無人航空機間の通信に与える影響の測定を目的とした通信実験です。地上端末から対地上高度100mで旋回飛行する無人航空機にメッセージを送信し、地上端末と無人航空機との間でメッセージの到達が可能な距離を測定しました。この実験では下図のような実験の結果が得られ、上空を移動する無人航空機と地上端末間の距離が通信に与える影響が確認されました。
なお、本実験では受信観測装置として”スマホdeリレー®”の技術が搭載された端末を使用しました。
東北大学青葉山キャンパスを大規模災害によって通信ネットワーク機能が完全に失われた地域と見立て実際に実験しました。1台のICTカーと3台の基地局によってWMNを構成し、図の白枠内で示されるエリアにサービスを提供できることを確認しました。
さらに、当研究室が開発中の端末間通信アプリ「スマホdeリレー®」と連携することによってICTカーのサービスエリアの拡大が可能であることをフィールド実験により検証しました。「スマホdeリレー®」とICTカーを連携したネットワークでは、サービスエリア内の端末がサービスエリア外の端末との仲介役になることによって、サービスエリア外の端末もICTカーにメッセージを送信可能になります。ICTカー単独でサービスを提供した場合と比較して、スマホdeリレー®と連携した場合、約2.7倍のエリアで通信サービスを提供可能であることを確認しました。
2014年12月にスマホdeリレー®第2世代の端末を積載した車と歩行者を接続する歩車間通信の実験を行いました。
歩車間通信は自動車の自動運転技術や安全運転支援技術を実現する通信方法の一つとして注目を集めています。
また、スマホdeリレー®第2世代はWiFi Directによるグループ構築技術を使用し、構築するグループを動的に切り替えることでデータの拡散を実現する独自のグループ制御技術を搭載しています。
本実験ではこの技術を使用することで、当初は独立していた2つの歩車間通信グループを移動に合わせて統合し、全端末へデータを拡散できることが確認できました。
2016年8月2日、フィリピン セブ島のサン・レミジオ市にて、スマホdeリレー®を用いて、通信圏外地域における被災者情報の収集を想定した一般市民参加型のデモンストレーションを実施し、学校周辺の被災者安否情報(名前・顔写真)を災害対策本部へ情報を集約することに成功しました。
サン・レミジオ市は、2013年11月の台風で甚大な被害を受けました。その際、通信システムが使用不可能となり、被災者情報の交換および集約が困難となりました。このことから、災害時に情報交換・集約が可能な耐災害通信システムの需要が高まっています。
そこで、スマホdeリレー®により災害対策本部へ被災者情報を集約することを想定し、現地の方々が被災者情報の交換と集約を行うデモンストレーションを実施しました。
本デモンストレーションの結果から、スマホdeリレー®が災害時の情報集約に役立つことを確認しました。また、本技術に関するアンケート調査を通じて、災害時のみならず日常の通信手段としても需要があることを確認しました。さらに、本活動は現地にて高く評価され、サン・レミジオ市長より感謝状を受賞しました。