研究内容

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研究概要と体制

ネットワーク ネットワーク

私達の身の回りは様々な通信機器とそれらをつなぐ情報通信ネットワークで溢れています。スマートフォンや携帯電話、タブレット端末、ウェアラブルコンピュータのほか、ゲーム機、電子レンジ、冷蔵庫といった家電製品、さらにはカーナビゲーション、無人航空機、環境観測器など、ありとあらゆるものに通信機能が搭載されるIoT時代となりました。これにともない、それらをつなぐネットワークも多様化が進んでいます。無線アクセスネットワーク、携帯電話ネットワーク、衛星ネットワーク、車車間通信ネットワーク、光ファイバネットワークなどに加え、アドホックネットワーク、センサネットワークなど様々な通信ネットワークが構築されています。では、私達はこれらの情報通信ネットワークの能力を最大限利用できているのでしょうか?また、これらの情報通信ネットワークの能力そのものをさらに向上させることはできないのでしょうか?本研究室では次の時代の情報通信ネットワークの姿を追い求め、理論を背景としたネットワークデザインとプロトコルデザインを軸として、最適な情報通信ネットワークの実現に向けた研究開発に取り組んでいます。

  • 無人航空機ネットワーク
    • Unmanned Aircraft Systems (UAS)、UAV、無人航空機、無人飛行機、メッセージフェリー、モバイルシンク
  • 衛星ネットワーク
    • 衛星携帯電話、GPS 、環境観測衛星、津波検知システム、惑星探査衛星、光衛星通信、衛星センサシステム(SRSS: Satellite-Routed Sensor System)、階層型衛星ネットワーク(MLSN: Multi-Layered Satellite Networks)、地上/衛星統合移動通信技術(STICS)、超高速インターネット衛星(WINDS)、技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」(ETS-Ⅷ)、準天頂衛星システム(QZSS)
  • Intelligent Reflecting Surfaceを利用した通信ネットワークシステム
    • 知能電波反射面(Intelligent Reflecting Surface: IRS)、メタマテリアル反射板、IRS移動通信システム(IRS-aided cellular communication system)、プログラマブル無線伝搬環境(Programmable Wireless Environment: PWE)、Beyond 5G、6G(右の動画は川本准教授が出演したBeyond5Gの概要説明動画)
  • 光と無線の融合ネットワーク
    • Radio and Fiber (R&F), Radio over Fiber (RoF), Fiber-Wireless (FiWi), Smart FiWi (SFiWi), PON, WLAN, 省電力化
  • レジリエントネットワーク
    • 無線メッシュネットワーク, 携帯電話網, Heterogeneous Network (HetNet), LTE-B, Movable and Deployable Resource Unit (MDRU), NerveNet
  • 機械学習、ディープラーニングを利用したネットワーク制御
    • 機械学習、ディープラーニング、クラウド、ネットワークアーキテクチャ、トポロジ、Software Defined Networking (SDN)、Openflow、Network Functions Virtualization (NFV)、オーバーレイネットワーク、ネットワーク仮想化、データセンターネットワーク、データ分散・複製制御、ネットワーク符号化、ビッグデータ解析、セキュリティ・マネジメント

↓川本准教授が出演したBeyond5Gの概要説明動画

研究分野の紹介


無人航空機ネットワーク


近年、宅配や橋梁点検、被災地域における通信インフラの構築、高度道路交通システム(ITS)における通信補助等、様々なアプリケーションにおいて無人航空機(ドローン)の利用が注目を集めています。これらのアプリケーションでは、リアルタイム空撮映像の伝送や、他無人航空機から送信されたデータの中継等、通信・ネットワーク技術が必要不可欠となっています。
我々の研究室では、周波数帯域を効率的に利用し、高速・低遅延な無人航空機ネットワークの実現を目指しています。そのために、無人航空機の移動によるネットワークへの影響の解析や、実際の無人航空機を用いた通信特性の測定実験等を行っています。
研究課題例は以下の通りです。

  • 複数無人航空機における効率的なリアルタイム映像伝送手法に関する研究
  • 無人航空機を用いたワイヤレスメッシュネットワーク構築に関する研究
  • 高度道路交通システムにおける受信車両数の最大化のための無人航空機の制御方法に関する研究
  • 無人航空機とエッジコンピューティングを用いた計算資源の提供に関する研究


衛星ネットワーク


IoTの更なる進展が予想される5G時代では、ユーザ密度の高い居住区に限らず、ユーザ密度の低いルーラル地域や空海域にも通信要求が拡大していくことが予想されます。現存の地上ネットワークのみでは新たに拡大が見込まれる通信要求への対応は困難であるため、地上ネットワークを補完する手段として、地球全体にカバレッジを広げる低軌道衛星コンステレーション等の大規模な衛星ネットワークが注目を集めています。しかし、大規模衛星ネットワークと地上ネットワークを効率的に統合し,ネットワーク利用効率を向上させるためには、自システムの周波数干渉をはじめ、システム間の周波数共用、衛星ネットワーク特有の遅延時間や衛星自身の移動性、ネットワークの利用コスト等、様々な課題を解決しなければなりません。本研究室では、衛星ネットワークと地上ネットワークとが相互に作用し協調するような地上・空・宇宙の統合ネットワーク実現を目指し、数理モデルの構築や、AIによるネットワーク制御に関する研究を行っています。
研究課題例は以下の通りです。

  • 5G/Beyond 5G時代の衛星通信における通信環境変動を予測した周波数割当に関する研究
  • 低軌道衛星コンステレーションの低コスト化を実現するための伝送制御に関する研究
  • 地上・空・宇宙統合ネットワークにおけるAIを用いた伝送制御に関する研究


Intelligent Reflecting Surfaceを利用した通信ネットワークシステム


アンテナ、アクセス方式などの送受信技術の発展によって、無線通信技術の性能は飛躍的に向上してきました。例えば、移動通信システム(携帯電話通信)は数~10年毎に進化しており、2020年に日本で運用が開始された第5世代移動通信システム(5G)の通信性能は2015年運用開始の4Gの数十倍になると予想されています。しかし、このような無線通信の成長は徐々に限界を迎えつつあるともいわれています。その成長のボトルネックの一つが、基地局と通信端末の間に障害物があると通信が不安定になるという物理的制約です。送受信技術が高度化したとしても、電波が遮られれば通信できなくなってしまいます。このようなボトルネックを解消し,無線通信技術にパラダイムシフトをもたらすためには,新たな通信ネットワークの体系を構築する必要があります.そこで、本研究室では5Gの先、6G時代における新たなネットワークの体系として、Intelligent Reflecting Surface(IRS)を用いたネットワークの可能性を探求しています。IRSは多数の受動反射素子で構成される電磁波反射体です。反射素子は動的に特性変化可能なメタマテリアルで構成されており、各素子の反射特性を適切に変更して理想的な電波伝搬経路を設計することで障害物を迂回した電波伝搬ルートを確保し、障害物の影響を受けない通信を実現することが可能です。本研究グループでは、IRS融合型通信システムの実現に向け、基礎理論の構築および新たな通信制御アルゴリズムの研究を行っています。また、理論検討結果の検証などに向けて、実機開発および実証実験にも取り組んでいます。下記写真は、株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所製作のIRSデバイスを用いて行った測定実験の様子です(※)。
研究課題例は以下の通りです。

  • チャネル推定・送信プリコーディングの効率化
  • IRSの面的配置位置最適化
  • IRS通信システムにおける新たなリソース割り当て方式の開発
  • IRS通信システムの制御プロトコルの開発
  • IRSを用いた上空ネットワークの構築


※本研究開発は、情報通信研究機構 革新的情報通信技術研究開発委託研究「Intelligent Reflecting Surfaceによるプロアクティブな無線空間制御と耐干渉型空間多重伝送技術の研究開発」の助成を受けたものです。

光と無線の融合ネットワーク


高速化にしのぎを削る無線通信と光通信ですが、それぞれ全く異なる特徴を持っています。ユビキタス通信を可能にする無線ネットワークと超大容量通信を可能にする光ネットワークは、ともに通信インフラの主軸として位置づけられ、両者の高度な連携・融合は、ICT社会の進化に必要不可欠なものとして、その実現が期待されています。
全く異なる経緯で進化を遂げてきた無線通信と光通信の融合を実現するためには、両者が持つ特性を上手く活かすための仕組みが必要になります。
研究課題例は以下の通りです。

  • 無線通信と光通信の高度融合に関する研究
  • 通信品質制御や消費電力制御のネットワーク全体最適化技術に関する研究


レジリエントネットワーク


私たちが経験した東日本大震災のような大きな災害の発生時には、普段使われている通信インフラの倒壊や機能停止が起こり得る一方、被災者の安否確認や災害対応者の連絡の手段として情報通信の重要性はより一層大きなものとなります。このとき被災地で必要となる情報通信サービスを提供する手段として、通信機器どうしの相互接続によりインフラに頼らないネットワークを構築する技術の実現が期待されています。
災害に強いICT機器や仮想ネットワークの活用により、刻一刻と変化する災害時の環境にしなやかに対応できるレジリエントなネットワークの実現を目指しています。
研究課題例は以下の通りです。

  • 耐災害無線メッシュネットワークに関する研究
  • サイバーフィジカルシステムとしての耐災害ネットワークに関する研究
  • ネットワーク仮想化による耐災害ネットワークの性能向上に関する研究


機械学習、ディープラーニングを利用したネットワーク制御


近年、情報通信分野の機器や技術の急速な発展によりネットワークを流れるデータトラフィックは爆発的に増大しています。しかし、既存の単純なネットワーク制御手法は、このような急激なトラフィック増加に対応することができないと言われています。研究の進歩が目覚ましい深層学習(ディープラーニング)は、ネットワーク管理者による知的で新しいトラフィック制御を実現することができる技術です。深層学習は、画像認識、音声認識、ロボット工学、自動運転、自然言語処理など、情報科学の多くの分野で応用研究が実施され、有効性が実証されてきました。一方で、ネットワークのトラフィック制御分野では深層学習の応用は始まったばかりであり、さらなる発展が見込まれています。当研究室では、知的なネットワーク制御システムへの深層学習の応用を発表し、この分野の先駆者として最先端の研究を行っています。
研究課題例は以下の通りです。

  • 深層学習に基づくネットワークの知的なトラフィック制御
  • 深層学習に基づく有線・無線の基幹ネットワークのルーティング制御
  • ルーティングプロトコルを使用しない未来型の無線ネットワーク
  • SDNや5Gネットワークにおける深層学習に基づくトラフィック制御技術
  • 強化学習に基づく無線ネットワークの電力効率向上に関する研究
  • 深層学習の宇宙-空-地上の統合ネットワークへの応用研究


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